Guitars On Broadway: GUITARS
まさにジャパンビンテージ。「JooDee」のエレクトリックカスタムストラトキャスター。コンデンサーや線材のチェック用に改造できる安いギターを捜していたが、たまたま入った渋い中古楽器店の奥に立てかけられていた。このジョーディーというメーカーは昔、ミュージックライフの広告を見ただけでいまごろ現物にお目にかかれるなんて。
電気炉は遮断されません
1970年代日本では本家ギブソン・フェンダーのコピー商品を作るメーカーが乱立した。当時、グレコやフェルナンデス、ヤマハなどのビックメーカー以外は中小零細企業がほとんどで、実際ブランドだけで製造元は一緒だとか販売店、問屋のオリジナルブランド。価格帯別にブランド名を変えたりで混沌とした状況に。このジョーディーもその時代のブランドの一つ。1975年、大阪で楽器卸販売業の「ダイオン」が製造会社「ダイナ楽器」に製造依頼をし誕生したのがこの「JooDee」。高品質の中価格帯を目指したが75年~78年の短命に終わったブランドである。製造元のダイナ楽器は現在フェンダージャパンの一部製造をしている大工場。今でこそ世界屈指の楽器製造大国になった日本だが70年代は「ファウンダー」「ギボン」「ギャンソン� �等ギリギリな感じのブランド名で堂々と勝負していたのも凄い。これは今の中国に何故か似ている。しかし、70年代初期のデタッチャブルレスポールだって調整すると当時のギブソン以上だ。
古い旋盤の部品を購入する場所
当初、「フォトジェニック」や「レジェンド」のストラトタイプを探していたがそれよりも安く、中古のBOSSの歪系エフェクターぐらいの価格。手にとってみると弾かなくてもわかるいい感じ。アッシュ風のセン単板センター2ピースで軽い。70年代の国産にありがちな縞模様の合板ではない。アンプで試奏させてもらうが70年代フェンダーの音だ。トレブリーでパワーがある。独特な噛付くリアの音。いびつにカットされたピックガードだったが即購入。店主の「ケースもいかが?」の声も振切り裸のギターを車の後部座席に放り投げた。
よーく見るとフェンダーのようで違うこの時代のスタイル。今ほど細かな情報がない時代、工場での職人の「こんな感じだろうか?」というのが聞えてきそうだ。一回り小さいジョイントプレートは70年代中盤までの国産ギターのほとんどがこれを使っている。たぶんどこかのモノを流用したのだろう。驚くのがブリッジ。これも一回り小さいダイキャストプレート。インナーシャブロックではなくプレートをコの字に曲げたもの。中でハープのように弦がタテに6本丸見え。ピックガードをノーマルな3ピースに取り替えたらブリッジの隙間が極端になった。これでも問題が全くないリアルストラトトーン。カラハムブリッジが泣けてくる。
ピーク電圧は何を意味する
PUは底板にマグネットが横に貼り付けてあり極端に細い線材。サーキットはポット全て500kを使用してトレブリーさを出している。これもノーマル250kに変更。スイッチもフェンダー純正オークの5WAYに。サーキットキャビティの深さが8mmぐらい浅い為、ピックガードが閉まらないのでセレクター部分を少し削った。ワイヤリングもし直しコンデンサーはダプラー200V 0.068。0.1だとコモリ過ぎるし0.047あたりだとコモリ足りない。0.068だとバランスがよく、カットするとローミッドのブースト感がありブルースに最適。これはメーカーや固体によっても違うからほんと大変。アウトプットジャックがこれまた見たことない小さいタイプ。スイッチクラフトにするとこれも穴が一回り小さい為、シールドジャックが刺 さらない。曲げたり削ったりでなんとか装着。
問題がネック。許容範囲をちょっと超えた順ゾリでトラスロットを回転しても直らない。マズイと思ったがナットにグリスをつけて限界ギリギリまで回す。トラスロットの仕込みが悪く、効いてきたのが最終段階に近づいてきたあたりで急にまっすぐになった。弦をはってもあまり動かない。30年以上たってビンテージのように落ち着いている感じ。ネックポケットの深さが通常フェンダーのように17mmではなく19mmもありシムを入れる箇所がより1mm深く削られている。その為、サドルを目いっぱい下げても弦高が2mm以上ある。はがき厚のシムを4枚張り合わせてやるとちょうどいい感じだ。シムを嫌う人が多いが音には影響ない。弦を張ったときのアレだけのテンションでも動かないのだから、シムで多少の隙間ができても拘る必� �ない。ディープジョイントとかいうのならスルーネックが断然いいのだろう。精度ばかり追求するとスケールの小さなタイトなトーンのギターになってしまう。問題は適正なサドルにかかるテンションや弦高を維持できるか、それに答えるネックの強度があるか。ボディはあくまでもトーンファクターで軽量で倍音を多量に放出すれば最高である。鳴らない重いワンピースボディより鳴る軽い複数ピースの方が音はいい。特にフェンダースタイル系はその傾向が強い。
ペグもオリジナルらしき物。ペグブッシュが丸く大きくビザール。時代的に当然ラージヘッド、2ストリングガイド。フレットはスモールフレットをすり合わせてるためフレットレスワンダー状態。しかし、チューキングも問題ないし、本来低いフレットの方が音は太い。
オークションなどで見かけるジョーディーのギターはヘッドにアーティストカスタムと入っておりネックジョイントも3ボルトになって、ブリッジの大きさもフェンダーサイズに変更になっていることからこのエレクトリックカスタムは75年あたりの「JooDee」の初期物と推測される。
この時代の日本のエレクトリックギターメーカーは技術革新を繰り返し、駄目になっていった本家USAメーカーの工場ラインを立て直すまでに至ったのには驚く。70年代の日本のガレージメーカーなくしてフェンダーのカスタムショップは存在しなかったかも。そういえば80年代に入りCBSからどん底フェンダーを買い取って復活させた故フェンダー社前会長ビル・シュルツ氏はヤマハUSAの人でしたしね。
まだコレクションもお手軽なガレージジャパンビンテージ。こういうギターと出会うとまた深みにハマる。また別に改造用のギターを探さなくては。
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