非接触電力伝送 - Wikipedia
非接触電力伝送(ひせっしょくでんりょくでんそう 英: Contactless power transmission, 英: Wireless energy transfer)は、コードレス電話、電気シェーバー、電動歯ブラシなどに使用されており、金属接点やコネクタなどを介さずに電力を伝送すること、およびその技術である。ワイヤレス給電や非接触電力伝達、無接点電力伝送などとも呼ばれる。2次電池を内蔵した機器に電力を送る場合、非接触充電(Inductive charging)などと呼ばれる。
この技術は、19世紀に電磁気学として集大成された中の相互誘導作用を利用している。
構想は20世紀初頭にニコラ・テスラが考案した。世界システムと呼ばれる電力を送る構想があった。その後、研究が進められ、現在では発電衛星の研究が行なわれている。かつては用いるコイルが目に見える大きさであったが、現在はモバイルFeliCaを筆頭に、システムの集積化も成功している。
2010年7月にはWireless Power Consortium(WPC)によって国際標準規格『Qi』が策定された。5W以下のモバイル端末向けの規格ではあるが国際規格の策定により2011年以降の普及が見込まれており[1]、今後ノートパソコン等を対象とした最大120Wまでの規格策定も行われる[1]。
非接触での電力供給を可能にする技術としては2009年現在で3つの方式が主流であり、2つの隣接するコイルの片方に電流を流すと発生する磁束を媒介して隣接したもう片方に起電力が発生する電磁誘導を用いた「電磁誘導方式」、電流を電磁波に変換しアンテナを介して送受信する技術である「電波方式」、電磁界の共鳴現象を利用した「電磁界共鳴方式」がある[2]。
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電磁誘導方式は、原理としては電磁誘導そのものであり、磁束を媒体として受信側コイルに送電する。このときの効率は結合係数kに依存する。kは相互インダクタンスに依存し、これが距離に依存するため、結局は距離によって依存するパラメータとなっている。 そのため、小さなコイルを用いた場合は非接触といえないくらい近い距離での送電しかできず、主にSuicaやiDなどに用いられるFeliCaや調理器として用いられるIHなどの近距離送電の用途に限られている。
また、送受信デバイスの位置ずれや、受信デバイスの物質における表皮効果による損失で、効率が劣化する場合がある。
電磁界共鳴技術については2006年11月にマサチューセッツ工科大学 (MIT) が実用化の可能性を発表した[3]。コイルやコンデンサが共鳴(共振)して結合されることから、「共振方式」や「結合方式」とも呼ばれるが、開発者であるマリン・ソーリャチッチはこの技術を無線 (wireless) と電気 (electricity) を合わせた造語である「WiTricity」と名付けた[3]。 正確には電界と磁界は別物であり、電界結合と磁界結合は別々の考えである。しかも、電界と磁界が共存する場合は互いに悪影響を及ぼすため、「電磁界共鳴」という表現はあいまいである。
原理は遠く離れた音叉が同じ共振周波数によって共鳴する性質を利用したものであり、送受信部の共振周波数を一致させた受信デバイスがk=0となる距離も高効率で送電できるため、電磁誘導よりも長い距離を伝送できるのではないかと注目されている。これは、結合係数以上にコイルの質であるQを高めているためである。この方式を用いる際はコイルとは別にループも用いるのが一般的である。
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MITの実験では、ギャップ1mで約90%、2mで約45%程度の効率を実現し、実際に2m先の電球を灯すことに成功した。この実験以降、送受信デバイスの位置ずれに不問であること、複数のデバイスに対しての送電が可能であること、高効率かつ大ギャップでの無線電力伝送が実証されたことが評価され、IEEEにより「世界を変える7つの技術」に選定された[4]。
また、送電にレーザー光を用いる方法[5]や、太陽電池と組み合わせたデバイスも開発中である。
将来的には、電力とデータを同時に伝送できる技術として、サーフェイスLANの実現を目指している[6]。
一般に、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式はともに非放射のエネルギーを利用するべく近傍界で電力のやり取りが行われるため、近傍界で定められた距離以上の伝送は困難である。また、コイルの大きさ(正確には相互インダクタンスからなる結合係数kとコイルの質Q)が伝送距離を大きく左右するため、小さなコイルやコンデンサでは長距離伝送が困難である。
また、送受信デバイス間の位置ずれや、電磁波として放射されることによる損失、表皮効果による損失などにより、近距離であっても100%の効率で伝送できるわけではない。
電磁界共鳴方式では、送受信デバイスの共振周波数についてマッチングをとらなくてはならないため、設計が容易に行えないことが難点である。給電システムを考える際、受信デバイスを検出する必要があるため、大きなコイルを一つ使うよりも、小さなコイルを複数用いた装置が実用化されている。[7]。
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[編集] 大電力用途への実用化に向けた動き
ワイヤレス給電は、小電力分野については当初、特に防水性が求められる為に端子の露出が好まれない電動歯ブラシや電動シェーバーといった分野で採用されて来たが、その他の分野でも非接触型ICカードや[8]や、コードレス電話[9]などで、少なくとも2006年~2007年ごろには広く使われる様になっている。
2009年(平成21年)5月25日、日本の総務省はワイヤレス電源の実用化の検討として、ほかの家電製品や人体への影響などの調査を経た上で電波の周波数帯割り当て、電波の干渉などの実用化に向けた課題への検討に入ると共に、7月に発表される電波政策懇談会の報告書内容に盛り込み、2015年の実用化を目指している[10][11]。
1984年(昭和59年)4月、株式会社ビー・アンド・プラス(旧:日本バルーフ株式会社)は電磁誘導(共振回路方式)を用いて、非接触給電および、信号伝送を同時に行うことを可能にしたセンサーの開発に成功し、製品化した。[12]
2006年(平成18年)12月4日、東京大学大学院工学系研究科東京大学国際・産学共同研究センター合同記者発表会にて、東京大学大学院工学系研究科助教授の染谷隆夫と東京大学国際・産学共同研究センター教授の桜井貴康を中心とした研究チームがトランジスタなどを組み合わせたシート型のワイヤレス電力伝送システムの実現に成功した[13]。
2008年(平成20年)2月6日、国土交通省は路面等に埋め込んだ給電装置から電磁誘導により、非接触で車両側のバッテリーに急速に大量充電し駆動力の一部とするハイブリッドバスを、羽田空港のターミナル間の無料連絡バスとして実際に運行する事を発表した[14]。
セイコーエプソンと村田製作所は、携帯機器を非接触で給電する「携帯型充電器」を試作、2008年11月19 - 21日にパシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2008」で出展した[15]。
2008年(平成20年)8月21日、インテルは2006年に発表されたMITの物理学者の理論を元に、電磁場共鳴技術によるワイヤレス共振エネルギー・リンク (Wireless Resonant Energy Link:WREL) の研究を行っており[16]、サンフランシスコで開催された2008年Intelデペロッパー・フォーラムで研究成果を発表、ワイヤレスで60ワットの電力を発生させることに成功した[17]。インテル最高技術責任者 (CTO) のジャスティン・ラトナーがこの講演時に実際に発生させた60ワットの電力で電球を点灯させているムービーも公開されている[18]。
ソニーは2009年(平成21年)10月2日、電源コードを使わなくても薄型テレビなどのデジタル家電に離れた場所から電力を供給できる「ワイヤレス給電システム」を開発したと発表した[19]。
2010年、昭和飛行機工業は充電スポットに停止するだけでEVに充電できるワイヤレス給電技術をEVバスで実用化に成功した。これは電磁誘導方式を用いており、循環線で1周約5km余りとなるこのバスの走行に必要な電力は、充電スポットに計7分停止するだけでまかなえてしまう。[20]
同年、サンワサプライはワイヤレス給電を利用したワイヤレスマウスを発売した。これは、USBで接続したマウスパッドに磁界を発生させることで、マウス内部の回路に電力を供給する構造をとっている[21]
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