IDEOを超えよう(1)
なんだか、みんな「ブレスト」ばかりに注目していませんか。
IDEOに注目すると、チームで付箋ぺたぺた貼って議論している、あの様子にあこがれる。
ああすればイノベーションがおこせる!と思ってしまいがちです。
でも、IDEOに学ぶべきことは、それよりずっとたくさんある。
そして、付箋をぺたぺた貼ったからといって、いい成果がでないこともまた事実。
私がIDEOを知ってから、もう10年になります。2000年の大学入学して1年の授業で、IDEOのショッピングカートの案件のプロセスのビデオ(以下ビデオ)を見たり、現場にいって作業をしている人の横で行動を観察し記述したりしました。(私のグループは「病院」の調査をしました)
蒸発器コイルは何をしている
授業の中では、実話に基づく映画「アポロ13」も見ました。これはチームワークでのあらゆる問題解決と、短時間でのロケット内のありものだけを使ったプロトタイピングが参考になります。
船内のありものだけでつくったというエアフィルター
ヒューストン管制センターでは、アポロ飛行船内にある道具だけで、しかも大至急という条件付きで、規格の異なるフィルター同士を接続する道具を作ることになった。
二酸化炭素を吸収する水酸化リチウムフィルターへの空気が逃げないように、靴下をバッファ代わりに利用した即席フィルターだった。製造方法をアポロ13号乗組員達に伝えると、乗組員達は凍えるような寒さの中、フィルターの製作に成功。致死濃度15%に達する寸前で二酸化炭素濃度の問題は解決した。
アポロ13 – Wikipedia
有名ですので、すでに見ている人も多いと思います。映画としても非常に面白いので、見ていない人は速攻でみましょう。
衣服は時代遅れであることを意味することができます
これもIDEOのプロトタイプの例として有名なものですね。でも、これまでこういう「あり合わせ」でものをさくっとつくって具現化して見せる人、あまり見たことありません。こういう「あり合わせのものでもいいから具現化することが重要だ」という議論にはならず、どういうわけかブレーンストーミングのほうが注目されてしまっています。
所属していた研究室では、次世代リモコンのプロジェクトで、そのへんにあった名刺入れのようなケースにPhidgetsの加速度センサーと、タッチセンサーをセロファンテープで取り付け、今で言うWiiのようなテレビリモコンを、さくっと具現化し操作を試して体験するといったことをしたことがありました。
前回のブログの記事「アイデアは誰でも持っている」で書いたとおり、アイデアを人に伝えるときも重要です。紙に絵を描いて伝えられる人はそうするべきですが、立体物の絵を描くのはなかなか難しいものです。そんなとき、身の回りのものを適当に組み合わせて、「こんな感じ」と伝えてみるのは、話すだけより遙かに身体的で、具体的で、やりたいことややるべきことが共有されやすいのです。(もちろん、あまりに具体すぎて、逆効果もあることも配慮すべきでしょう)
ライターの火炎放射器を作り方
こういったプロトタイプをさくっと作るためには、日頃の環境に何があるかでも、とっさにできてくるモノが変わるのは当然です。ですから、この点でもアイデアを生み出すためには、「できる」を「しやすく」する日頃の環境も重要なのです。
ほかにもIDEOの手法は、「動詞」でものごとを考える。動詞の重要性についても述べています。
このブログのサブタイトルは「動いている世界をそのままに」ですが、私は生態心理学にも興味があることから、人間の行為をはじめ、動詞にも敏感です。私がこれまでつくってきたシステムは「動きの中」で使われるものが多くなっています。たとえば、「眺める」や「押す、引く」あるいはカーソルの動きなど、とにかく人間のアクションが中心にあります。アクションが中心であるのは、人間は動きの中で考える、という発想もあってです。
動詞で考えることは、この分野では常識で、強力な発想方法だと思っているのですが、意外と「動詞で発想しよう」とリアルにそれを実行している人は少ないようにも私は感じています。
と、IDEOを知ってからいろいろ、自分でもできることを確かめつつ、さらにアイデアを取り巻く、問題、課題、方法について考えてきました。それらは、前回少し紹介しました153枚のスライドにも反映されていますし、それはIDEOのやり方を取り込みつつも、独自の考え方やり方として発展させたものです。
私の感覚では、IDEO優れた会社であることは間違いありませんが、また時代も変わってきていることをふまえて、新しい方法を模索するべきだと思います。またアイデアとコミュニケーションという意味では、国の文化によっても多少手法を変える必要もあると思っています。
さて、
長くなったので、今回のエントリーは「IDEOを超えよう(1)」として一度ここで終わります。
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