ソニータイマーと電食 - 地給知足がおもしろい!
ソニータイマーと電食
「ソニータイマー」という言葉があります。ソニーの電化製品は大変に精巧にできていて、「保障期間である1年を過ぎた翌月、つまり買ってから13ヶ月目に壊れるように作られている」、のではないか、というブラックジョークです。
写真は我が家の愛車1994年式のセレナ。我が家にはまともに走る足グルマがなかったので5年くらい前だったかなぁ? ヤフーオークションで13万円で買いました。
大型犬用のバリケンを乗せることができる「ワンボックスカー」であり、寒冷地なので「4輪駆動」であること、なおかつ天ぷら廃油を燃料として併用したいので「ディーゼルエンジン」であり、さらには「ヘッドライトがツリ目でないこと」、などなど足グルマのくせにいろいろ条件をつけたので、我が家としては高価な買い物になってしまいました。13万円というのは私が買った車の中では、かなり高価な部類に入ります(以前、山海堂発行の「2万円でクルマを買う!」という本をお手伝いさせてもらったことがあり、この本に倣えば13万円は、クルマが6台以上買える金額でもあります)。
しかしそれにしても、イマドキのクルマはなぜだかみんな、目がツリ目で、なんだかいつも不機嫌そうな顔をしていると思いませんか? 都会に行くと、つりあがった目のクルマが列をなして渋滞していたりして、その姿を見るとなんだかそれだけで気が滅入ってしまうのです。そして不思議なことに田舎に行くと(軽トラをはじめとして)丸目のクルマが多いような気がします。都会のように新車は少なく、年式の古いクルマが多い、ということもあるだろうけど……。
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ちょっと大袈裟に言うと、世界中の都会の風景を、そして都市に住む人の心を殺伐とさせている原因のひとつが日本車のクルマの顔、特にヘッドライトの形状ではないか?などとも思うのです。自動車を設計しているデザイナーたちは、不機嫌そうなあのヘッドライトのデザインを「美しい」と思っているのだろうか……。
そんなこともあって上の写真のセレナを選んだのですが、その一番安心なはずのセレナが先日、壊れたのでした。マフラーがポッキリと折れてしまったのです。折れた部分をよく見てみると、ステンレスの消音器にステンレスのパイプを、スチール用の溶接棒を使って溶接されているように見えました。その溶接部がボロボロに錆びてしまい、ポッキリ折れてしまったのです。
ステンレスに鉄を接触させた状態で放置しておくと、鉄の部分が異常なくらいに早く腐食します。これは電食(あるいは「電蝕」と書く場合もある)という現象で、イオン化傾向の異なる金属を隣り合わせに接触させておくと、イオン化傾向の大きな金属は、それが単体で存在するときよりも、急激に激しく錆びてしまうのです。逆にその仕組みを使ってどうでもいい部分を酸化させることで(母材のイオン化を防ぎ)サビを防ぐ、という方法(犠牲電極による防錆(ぼうせい)という方法)もあるのですが、今回ひどく錆びてしまっていた部分は機能上錆びてはいけない部分なので、これはもしやソニータイマーならぬ、日産タイマーか?……などと、首を少しかしげながら修理をはじめたのでした。
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ちなみにトタン板(=亜鉛めっき鋼板)が錆びにくいのは、トタン板表面の亜鉛が犠牲電極となり、亜鉛が錆びることで内部の鉄がイオン化するのを防ぐことで鉄をサビ(酸化)から守る、というのがそのカラクリです。だからトタンの波板にステンレスの傘釘を組み合わせるのは失敗。ステンレスがトタンに接触すると電位差が生まれ波板側が激しく腐ってしまうのです。ステンレスの傘釘が有効なのは、相手がアクリルやポリカーネイトなど樹脂製の波板の場合で、こうした通電性のないプラスチックの場合には電食は起こりません。
↑ポッキリ折れてしまったのは、消音器の付け根の溶接部分。当初溶接で修理しようと思ったのですが、この周囲はサビがひどく、鋼板が薄くなってしまっていて溶接は難しそうでした。そこでJBインダストロウエルドという金属を含有したエポキシ系接着剤(耐熱温度は約300度)を(解体車のエキゾースト部に使われていた)遮熱用の耐熱布に含侵させ、それで折れてしまった部分を包むように接着。FRPのファイバーの代わりに耐熱布を、プラスチックの代わりに耐熱性のあるエポキシ接着剤を使ってみたのでした。そしてさらにその上から念のためアルミ缶の切れ端で包む込むようにして接着し、アルミ板を貼ることでさらなる剛性をだすことにしました。
ところで上の写真、タイコ(消音器)から伸びるステーの部分が他の部分に比べてより錆びていることが分かるでしょうか? これはおそらく電食によるもの。ステンレス製の消音器に鉄製のステーが溶接されているので、鉄のステーがひどく錆びてしまっているものと思われます。
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不思議なことに、マフラーの消音器部分にはステンレス鋼板が使われることが多いのですが、それを固定するステーの部分にはなぜか鉄が使われることが多いのです。そのため、このステーの取り付け部分(溶接部)が電食によって腐食しやすく、ステーが取れてしまうという故障が多く起こります。マフラーの故障は派手で目立ちます。走っていてあるとき突然、爆音を発しはじめたり、あるいは大きな部品が車体から外れてしまうわけですから、素人目にはかなり大掛かりなトラブルのように映ります。しかもそれが新車から三回目の車検の前あたりに起こることが多かったりしたので、これは○○○タイマーではないか? などと勘ぐることもあったりしたのでした。
結局、今回の腐食はポッキリと折れた部分だけではなく、腐食はマフラー全体に広がってしまっていました。接着剤によって折れた部分はどうにか一時的にはつながったのですが、排気音がうるさいことは相変わらずで、クルマの下にもぐって、怪しそうなところを突っつくなどしてよく調べてみたら排気漏れは折れた箇所だけでなく、たくさん箇所で起こってしまっていたのでした。
これでは寿命とあきらめるしかありません。穴のあいたマフラーの補修をあきらめ、メインの消音器とサブマフラーは交換することにしました。まずは中古品を探すことに。インターネットが普及したおかげで、最近は中古品や解体パーツをかなり手軽に探すことができます。まず「中古部品」で検索をかけ、全国規模の解体部品を統合して検索できるサイトで、車検証を見ながら型式や年式、車両の類別番号などを打ち込むと、全国の解体屋さんにある中古部品を一気に探すことができたりするのです。
しかし残念ながら、中古のマフラーは見つかりませんでした。エコカー補助という名目で、まだ使えるこの手のクルマを、我々の税金を一台あたり10万円以上も使って、大量に強制廃車させ、それらの部品が名目上はリサイクル(リユース)されることになっていたのに、中古部品はちっとも流通していいないのです。それもそのはず、期間内に下取りに出して新車への買い替えをしないと、まるで損をしてしまうようなトリックを仕掛けられたのですから、多くの人がまだ使えるクルマを強制廃車させることに手を貸してしまいました。だからこの手の年式のクルマはほとんど残っておらず、それらの中古部品が流通する余地はないわけです。
仕方なしに、韮崎の部品屋さんに連絡し、「社外品」と呼ばれる部品を探してもらうことにしました。これはメーカー下請企業などが自動車メーカーの純正品としてではなく、供給する格安の新品部品で「純正部品」に対して、「社外品」あるいは「優良部品」などと呼ばれて供給されています。マフラーの場合、これとは別に、スポーツマフラーなどと呼ばれる純正品よりも高価な新品もある場合があるのですが、同じアフターマーケットでもそれらとは大きく(値段も)異なります。しかし、この「社外品」もこの年式のものは残念ながら流通していませんでした。
仕方なしにメーカー純正の新品を注文。メインのタイコの部分が約3万円で、サブマフラーが約2万円、あわせて5万2900円……。我が家にとってはクルマが二台買えてしまうくらいの大出費です。本当はステンメッシュの蛇腹の部分も壊れていたのでここも交換したいところだったのですが、これ以上の出費を抑えるため、ここは針金などで応急処置し、もうしばらく耐えてもらうことになりました。
こうして新品部品まで買って修理してクルマを乗り続けることが、経済的であるかどうか、あるいは地球に優しいことといえるかどうか?も検証しておく必要があると思います。そのあたりのことは、「断捨羅ない選択」で書きました。そちらをご覧いただけるとありがたいです。
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